ショアルマ(シャワルマ)の語源とことばの話
「ショアルマ(Shawarma)」という言葉はアラビア語の料理名として広く知られていますが、そのルーツをたどるとトルコ語に行き着きます。
語源は、トルコ語の「çevirme(チェヴィルメ)」で、「回転させるもの」という意味。肉を串に刺して回転させながら焼く、あの調理法そのものが名前になっています。
この「回転」という発想は、実は周辺地域でも共通しています。たとえばトルコの「ドネル(döner)」も「回るもの」、ギリシャの「ギロ(gyro)」も同じく「回転」を意味します。言語は違っても、料理の特徴をそのまま名前にしている点が面白いですね。
ちなみに「ショアルマ(shawarma)」という形は、トルコ語の発音がアラビア語に取り入れられる過程で音変化したものだと考えられています。こうした借用語の変化は言語学ではよく見られます。
オスマン帝国の影響下にあった地域では、トルコ語の語彙が各地の言語に取り込まれました。
たとえば、トルコ語「kebab(ケバブ)はアラビア語・ペルシャ語でもほぼ同形で使われます。
一方、現地風に発音が変わるケースも珍しくありません。たとえば、çevirme は shawarma へと大きく変化しています。
日本語の「パン(bread)」も、元の音がそのまま残らない典型例です。
一方、ガーリックソースとして知られるトゥーム(Toum)は、語源がとてもシンプルです。アラビア語の)ثوم(thūm / thawm)、つまり「ニンニク」そのものを意味する言葉です。
トゥームの表記にはゆれがあります。
thūm(学術的な転写)
toum / thoum(フランス語・英語経由の表記)
toumya(エジプトなどでの派生形)
アラビア語の「ث(th)」の音は日本語にないため、「トゥ」「ス」「サ」など様々に写されることが、表記のばらつきの原因になっています。
中東での呼び方の違い
中東一帯では「ショアルマ」という名称は広く通じますが、地域ごとに呼び方や文化的なニュアンスが異なります。
レバノン・シリア・ヨルダン・エジプトなどでは「ショアルマ(Shawarma)」が一般的で、これはオスマン帝国時代の影響を受けて広まりました。
トルコでは「ドネル(Döner)」または「ドネルケバブ」と呼ばれ、「ショアルマ」という言い方はあまりしません。自分たちの料理という意識が強いのも理由の一つです。
ギリシャでは「ギロ(Gyros)」と呼ばれます。語源はギリシャ語の「γύρος」で、やはり「回転」という意味です。
イランでは地域によって「ドネル・カバブ」と呼ばれることもありますが、そもそも串焼き文化が強く、「クビデ」など別の肉料理の方が主流です。
ショアルマ(シャワルマ)とは?
ショアルマは、大きな肉の塊を垂直の串に刺し、回転させながら焼き上げる料理です。外側が焼けたところを削ぎ落として提供するスタイルが特徴です。
ピタパンに挟んで野菜やソースと一緒に食べるのが定番ですが、ラップやプレートスタイル(ライス付き)もあります。日本でもかなり見かけるようになりました。
家庭ではなかなか再現しにくい調理法ですが、タンパク質と野菜を手軽に摂れるバランスの良さも魅力です。個人的には、選べるならライス派です。あの細長くてパラパラした黄色いご飯、たまに無性に食べたくなりますよね。
ショアルマに使われる肉
ショアルマに使われる肉は主に以下の通りです。
羊肉(ラム・マトン):伝統的で風味が強い
鶏肉:クセが少なく世界的に人気
牛肉:地域によっては使用されるがやや少なめ
合わせ肉:ラムとビーフを混ぜるケースもある
中東発祥のため、宗教的な理由から豚肉は基本的に使われません。
ショアルマのソース
トゥーム(Toum)
トゥームはレバノン発祥のガーリックソースで、名前の通り「ニンニク」が主役です。
見た目はマヨネーズのようですが、卵や乳製品は使わず、ニンニクと油を乳化させて作ります。ニンニクが効いていて、レモンの酸味とともに肉の脂をさっぱりと感じさせてくれます。
主な材料は以下の4つです。
ニンニク
植物油
レモン汁
塩
ハンドブレンダーを使うと、あのふわっとした質感を再現しやすいです。
タヒニソース
タヒニはごまペーストで、特にビーフやラムのショアルマと相性が良いとされています。
ベース:タヒニ(白ごまペースト)
レモン汁:酸味で軽さを出す
ニンニク:風味づけ
水:濃度調整
ハーブやスパイス:店ごとの個性
フムスやババガヌーシュにも使われる、中東料理の基本食材の一つです。
「タヒニ(tahini)」はアラビア語の動詞「挽く(ṭaḥana)」に由来し、「挽いたもの」という意味になります。これも語源がそのまま機能を表しています。
ジャジキ(Tzatziki)
ギリシャのギロに欠かせないヨーグルトソースです。
水切りヨーグルトにキュウリ、ニンニク、オリーブオイル、ディルを加えたもので、トゥームに比べてかなりさっぱりしています。
名前の「tzatziki」はトルコ語「cacık(ジャジュク)」に由来し、ここでも言語の往来が見られます。
アレンジソース
ヨーロッパや日本のケバブ店では、より食べやすいようにアレンジされていることも多いです。
マヨネーズベースのガーリックソース
ヨーグルト+マヨネーズ
チリソースやオーロラソース風
地域に合わせて進化していくのも、ストリートフードらしい面白さです。
